アンソロジー・・・
1つの作品やキャラクターをテーマに、複数の人が漫画や小説を描いて1冊にまとめた本
以前我孫子武丸さんの『殺戮にいたる病』を読んだのですが、ちょっと気になるタイトルの本を見つけたので読んでみました!
『殺戮にいたる病』の紹介は↓をご参照ください。

今回は『殺戮にいたる病』をインスパイアした企画ということで、原作著者の我孫子さんを含む計6名の作家さんがそれぞれに『○○にいたる病』というタイトル縛りで短編を書きあげているという豪華アンソロジー本となっています。
・エロ表現が苦手な方(かなり直接的な表現もあります)
・グロイ表現が苦手な方(血が出るレベルじゃないので)
・ホラーが苦手な方(おばけとか)
各作品の紹介(作者敬称略)
切断にいたる病
我孫子武丸(あびこ たけまる)・・・本格ミステリーの名手。巧妙なトリックやどんでん返しで知られる。
代表作品・・・殺戮にいたる病
AV制作会社社長の惨殺。
失踪した女優。
執拗なストーカー。
そして、現実を侵食するVR技術。
犯罪対策課に配属されたばかりの柴田と先輩・鷹森が捜査をする中、事件は連続猟奇殺人へ。
積み上がる証拠の先で、すべてはひとつの線に繋がっていく――はずだった。
だが、その線は静かに形を変え始める。
欲動にいたる病
神永学(かみなが まなぶ)・・・ミステリーにオカルトや超能力要素を組み合わせたエンターテインメント作品が人気。
代表作品・・・『心理探偵八雲』シリーズ
中学校で起きた刺傷事件。
現場にいたのは、加害者と被害者、そして一人の女性だった。
刑事・中西はその現場に、言葉にできない感覚を覚える。
家族の問題、人間関係のもつれ――
現実と過去が入り交じり、真実が見えてくる。
怪談にいたる病
背筋(せすじ)・・・SNSやネット発の新世代ホラー作家。日常に潜む違和感やじわじわくる恐怖を描くのが得意。
代表作・・・近畿地方のある場所について
幽霊が見えると主人公『私』に相談してきたAさん。
大学時代の元交際相手Bさんの死後、幸せな人生を歩んできたはずだったが次第に息子と夫の様子がおかしくなっていく。
そして何度も『私』の背後に感じる視線。
これは死んだBさんの復讐なのか・・・
コンコルドにいたる病
真梨幸子(まり ゆきこ)・・・人間の悪意や嫉妬を描く「イヤミス」の代表的作家。
代表作・・・殺人鬼フジコの衝動
かつてヒット作を生み出していたもののここ数年落ち目になってしまっていた小説家のもとに大手出版社から叙述トリックミステリー執筆の依頼がやってきた!
仕事内容に乗り気ではないものの挑戦することにしたが、なかなか編集者からのOKがもらえない。
改稿を重ねるうちに編集者への殺意と「コンコルド効果」に陥っていく小説家。
いつになったらOKがもらえるんだろう
拡散にいたる病
矢樹純(やぎ じゅん)・・・医療知識を生かしたミステリーや、日常に潜む狂気を描くサスペンスが持ち味。
代表作・・・夫の骨
元お笑いコンビだったツッコミ担当の印部が担当する深夜ラジオ。
その中の人気コーナー《俺を怖がらせてみろ》内で紹介された話は私の父がかつて小説で発表した『P集落の話』の盗作ではないかとクレームが入った。
《俺怖》の書籍化の話が進んでいるのにケチをつけてはいけないと対応をしていくと、相手は大手健康食品会社社長の佐藤梨穂であることが発覚。
しかも彼女は深夜ラジオのスポンサーになってくれると言う。
彼女の会社のプレゼント企画も人気は上々で、あとは彼女の父に盗作の件を謝罪しに青森へ向かって解決するはずだった・・・
フリーの構成作家水科皐月が深夜に出会った謎の女性、盗作とされた投稿をしてきた『やす』、健康保険会社の監修医師天童、そして『P集落の話』の作者榊怜司と娘の佐藤梨穂。
この不穏な違和感はいったい?
しあわせにいたらぬ病
歌野晶午(うたの しょうご)・・・読者の思い込みを覆すどんでん返しの名手。
代表作・・・葉桜の季節に君を想うということ
介護福祉士の比佐子は家族と連絡がつかなくなったから自宅を見てきてほしいと依頼を受け、要介護者のいる家庭を訪問する。
しかし、発見したのは介護者と要介護者の変わり果てた姿だった。
これは介護を苦にした無理心中なのか。
人生の幸せとは、相手への愛とは。
高齢化社会と介護の問題を浮き彫りにした作品。
読んだ感想(ネタバレあり)
全編通して楽しんで読むことができました。
まず一作品目から主題のテーマである『殺戮にいたる病』の作者、我孫子氏から入るのがよかったです。
もうほんと、グロといいグロ以上のエロといい、これはいわゆるセルフパロディというやつではないでしょうか。
ただ、まえがきにご本人が難しいお題だと書いてあった通り、やっぱり元祖『殺戮に~』よりは物足りなく感じちゃいました。
物足りないというか、犯人は性自認が変わっちゃったの?ストーカーに襲われたショックで?とVRを絡めて書かれたことでちょっと理解が追い付かない部分があったので・・・
とはいえ、二作目の『欲動に~』は『殺戮に~』をリスペクトしている空気がすごくありました。
エピローグから始まるところからして「あ!殺戮と同じだ!」とワクワクさせられます。
でもこれもオチがちょいと無理があるというか・・・
比嘉君も担任にする態度と話し方じゃなかろうよと思うし、事情聴取でも「彼女」とか「平井さん」って生徒に言わないだろうと。
「平井先生と秋山君は~」って普通聞きそうだよなぁとか
改めて読み返しちゃうとそういう「なんでやねん」が出てきちゃって「やられたー!」感は薄かったです。
トリックを考えたら仕方がないと思うんですけど、ちょっとモヤりました。
三作目の『怪談に~』はタイプの違うホラーもので結構好みでした。
はぁーなるほど、で、Bさんのお化けがどうなるの?主人公の後ろにいるのー?とワクワク考えていたら最後の一文でゾクゥッとさせられました。
あれ怖いよ。
「巧いか?」をあんな巧く使ってるなんて・・・怖いよ。
4作品目は短編集の中の短編集が楽しめてこれも好きな作品でした。
作家さんてすごいですよね、本編の中に短編を五つも考えられるとか。
読んでるとサラサラーっと書いたのかな?と思っちゃうけど、きっと見えないところでかなりの苦労があって、編集さんとバトルがあって、殺意も大変なことになっているんだろうなと若干のリアルを感じてしまいました。
『怪談に~』とこの『コンコルドに~』はいつか世にも奇妙な物語で実写化しそう、というか世にもっぽいと思いました。
しかも文体がポップに書かれていたのですごく読みやすくて、さらにコメディっぽいし、前三作が重めだったところにちょっと休憩~って気持ちにさせてくれたのがよかったです。
もしかして今回この本を書かれた6名の作家さんも慰労会で公開処刑なんてことは・・・ないですよね
『拡散に~』は別の作品にも収録されているらしくて、それが【或る集落の●】という本なんですけど、不気味さがすごい。(語彙力のなさ)
芸人が出ている設定なのに、全体的に文体から重い空気がこっちまでもわ~んって。
森尾の命はもうアレですね。ないですね。
CMソングで洗脳っぽくされているのも過去に世にも奇妙な物語で放送された『サブリミナル』を思い出してしまって、テレビとかYouTubeで流れてるCMソング大丈夫だろうかとか健康食品不信になりますよ。
『或る集落~』は未読なんだけど、その後の話とかあるのかなぁ?これ短編じゃ足りないよ。
でもあのモヤっとした終わり方が怖さ倍増な気もするしモーヤモヤです。
最後の『しあわせに~』は気づきました?
これだけ『いたらない』病なんですよね~。
(なぜか上から目線)
読了後現実の怖さと共に「うん、これじゃ幸せにはいたれないわ」と悲しくなりました。
この話だけ殺人は出てくるものの、ただのミステリ&ホラーではなくて社会問題とのリンクがすごくて考えさせられるなぁと思いました。
老老介護だけではないんですよね。
家庭ごとに問題はそれぞれあって、外部の人間にはわからない当事者同士の考えや幸せがあって、なんなら家族間でも思いは言わなきゃ伝わらない。
ってわかってるなら比佐子さん、良治と話し合ったほうがいいよ!
いつまで現役でいられるかわからない綱渡り人生だと、今度は比佐子さんところで悲しい殺人事件が起きかねないよ!
でもこんな問題がいろんなところで起きているって現実。
最後の話はオカルトホラーじゃない現実的な怖さと切なさがありました。
まとめ
今回【殺戮にいたる病】の縛りアンソロジー作品とのことで、どの縛りだったのかいまいちわからなかったのですが、どの作品も毛色が違っていたので全く飽きずに楽しんで読み切ることができました!
(タイトル縛りだと最後『いたらない』ってなっちゃってるし、【怪談に~】と【コンコルド~】は叙述トリックって言うのかなぁと疑問になってしまったので)
ただ、まえがきに書かれていたとおりかなりかなり難しいチャレンジだったそうで、縛りとかを超えてすごいなと感じました。
(このまえがきからすでに面白い)
なにより短編集なのでサクッと読めてあっという間に読了できたのがよかったです。
今回の読んだことのない作家さんの作品も気になったので近々挑戦してみようかなと思います。
それでは!
