今すぐに警察に助けてもらいたい、そんな時にかける電話番号はご存知ですか?
日本では様々な緊急ダイヤルが存在しています。(海外もあるんだろうけどよくわからない)
例えば急な病気やケガ、火災は119、海の事件や事故は118、災害時の安否確認は171など。
そして警察への緊急ダイヤル『110』。
今回ご紹介する映画は、デンマークでの緊急ダイヤル『112』の電話応対をする警察のお話です。
作品紹介
原題 Den skyldige
監督・脚本 グスタフ・モーラー
2018年製作2019年公開
製作国 デンマーク
上映時間 88分
年齢制限なし(直接映像はありませんが、ショッキングな表現は少し含まれています)
ジャンル サスペンス
この映画は緊急通報指令室のみで物語が進行していく、いわゆるワンシチュエーション映画です。
ちょろっと廊下が写ったり、最後のシーンで部屋から出て何かしてエンドロール・・・なんてこともなく、本当に最初から最後までワンフロアの一室(ドア一枚隔てた会議室みたいなところはあるけど)しか使われていません。
さらに登場人物も少ないことから、かなり低予算で製作されたとか。
本編はほとんどが緊急通報を受ける主人公のアスガーと通報者の声だけのやり取りしかないので、鑑賞者は状況を想像しアスガーと一緒に事件解決の糸口を考えていくことになります。
全く相手の状況が映像としてみられないので鑑賞者もアスガーと同じ条件分でしか事件の内容を知ることができないんですよ。
これがまたうまいですよね~。
2021年、アメリカで、アントワーン・フークア監督、ニック・ピゾラット脚本でリメイクされた映画が公開されています。
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アスガー・ホルム・・・主人公。警察として現場で活躍していたが、ある事件をきっかけに現在緊急通報指令室で電話対応の仕事を務めている。
イーベン・オスタゴー・・・誘拐された女性。子どもがいる。
マチルデ・オスタゴー・・・イーベンの娘。6歳。
オリバー・オスタゴー・・・イーベンの息子。赤ちゃん。
ミケル・ベルグ・・・イーベンの元夫。暴行罪で逮捕歴有り。
ラシッド・・・アスガーの相棒。
パトリシア・・・アスガーの妻。家を出ていった。
ここで紹介した登場人物はイーベン以外声のみの出演です。(パトリシアは名前が出ただけで声も出てません)
他に顔が出るのは同じくオペレーターの男性と女性くらいです。
あらすじ
警察であるアスガーは、とある事件をきっかけに現場を離れて緊急通報指令室で勤務していた。
そこに一人の女性、イーベンから「誘拐されている。助けて」と通報が入る。
電話の少ない情報から状況を判断し対応するアスガー。
彼はイーベンを誘拐犯から救うことができるのか!?
しかしこの誘拐事件、何かおかしい・・・
見どころ
この映画、『ほぼ全編に渡って電話でのやり取り』なので声と音が重要になってきます。
なので、BGMが一切ないんです。
緊迫していようが、ちょっと真相に近づいて話が盛り上がろうが関係なく音楽はありません。
そこがこの映画の雰囲気にすごく合っていて話に入り込めました。
さらに主人公のアスガーが電話を待っていたり、考え込むシーンの間がすごいリアルな時間を感じます。
男性のアップの画面で数秒無音。という事もザラなこの作品、事件がリアルタイムで進行していると思うとこの無言の間もすごく緊迫感が伝わります。
電話を待つ間も「早く~早く~!」とアスガーと一緒にヤキモキします。
もう一つの見どころは、アスガーがイライラしている時にヘッドセット(電話を受信した時使うヘッドフォンみたいなやつ)をはずすシーンがあるのですが、一発で取れず顔に引っかかってたところです。
どう見ても普通の映画ならNGとして撮りなおすような感じなのに、あのまま映像を使ったということが妙にアスガーのいらだち(冷静ではない)を表していてリアリティがありました。
ちょっとクスっとしちゃったけどね。
そして一番の見どころはやはり『事件の真相』です。
これは是非映画を観てみてアスガーと一緒に事件の整理をしてみてください。
感想(ネタバレあり)
以下ネタバレありの感想となりますので、未視聴の方・ネタバレは避けたい方は目を細めてスルーするかこのページをそっと閉じてください。
↓ ↓ ↓
相手の声色と後ろの物音・・・携帯の電波基地局でわかる通報者の大体の位置が状況を判断する最初の手がかりなのですが、これってどこの国の緊急ダイヤル担当の方も同じなんだろうなと思ったらもうね、そこから通報者の話を聞いていくんだけど、ふざけてかけてくる人とか緊急性が明らかにない人とか酔っ払いとかいるからかなり神経を削るお仕事だと思いました。
だからといってアスガーの最初の通報者への態度と対応はひどいです。
「緊急性はない。ゆっくりでいいよ」「自業自得だ」みたいなこと言ったりするし!(電話切ってからだけど)
というかアスガー直情型自己中タイプだと思いました。
勝手に捜査始めるし、人への話し方高圧的だし(最後に「ありがとう」ってワンクッション入れればオールオッケーなんかい!)、何より思い込みで勝手な行動するから余計事件が悪い方向に行くし。
相手を心配して居ても立っても居られないイライラとか焦りはわかるけど、物に当たるのはやめてー
壊したまま部屋を去るのやめてー
とアスガーにあまり共感できないまま終始モヤモヤを抱えてしまいました。
オリバーのアレは私でもなんとなく察しがついたので「いやいやいやいや!本を読むとか別のこと提案してあげて!」と心の中で緊急指令室補佐が叫んでいました。
あそこでマチルデをオリバーの部屋に入れたことがアスガーの一番のミスだと思います。
このムズムズモヤモヤさせるのを狙った上でのこの映画だとしたら監督や脚本の方は大成功したと思います。
たぶんですが、アスガーもイーベンと同じく精神的に病を持っていたのかなと思います。
あのポリデントみたいな薬って落ち着くための薬かなーって。(詳しくなくてごめんなさい)
後半に言っていた「自分の人生における悪いものを取り除きたかった」とは何だったのか。
自分の起こした事件前から私生活でも仕事でもうまくいかないことが積み重なって、気持ちがまいっていたのかもしれません。
明日には自分が裁かれる、そんな時に通常通りの冷静な判断は難しいのもわかります。
といってもこの誘拐事件に関わらければ、大切な相棒に嘘の供述をさせて無実を勝ち取り普通の顔をして警察として現場に戻ろうとしていたのだから、人間性に問題があるのは元からなのかな?
アスガーは何故罪を犯したのか。
後半に彼の自白ともとれる部分がありますが、イーベンに話したことが事実ならそれこそ「気に入らないから撃つ」ような感情的な自己中ということになってしまいます。
その相棒のラシッドも飲酒量最初に嘘ついて、「実は4、5杯」じゃないよ。最初に言った2杯でも運転しちゃダメだよ・・・
アスガー「じゃぁ気を付けて運転しろ」じゃないよ・・・
2人とも警察向いてないよ・・・
ちなみにデンマークももちろん飲酒運転には厳しい罰則があるそうです。
決してデンマークに行った際に「だってラシードは飲んでも運転してたよ!」なんて真似しないでください。
最後アスガーは自分のしたことを認めて、翌日の裁判でラシードにも正直に話していいと言います。
「え!?供述書にも嘘書いてあるのにいまさらそりゃないよ!!」のラシッドが一番かわいそうです。
デンマークにも偽証罪ってあるのかなぁ。だとしたら今度罪を問われるのはラシッドですね。
本当に最後まで他人を巻き込む自己中アスガーです。
そんな彼が最後に電話したのは誰なのか?
これは明確にされていないので観ている側の想像にゆだねられています。
家を出ていった妻か、自分の事件を担当した警察か、弁護士か、記者か・・・
いずれにしても自分の罪を認めた上での贖罪に繋がる行動なのだと思います。
※贖罪・・・自分の犯した罪や過失を償うこと。罪滅ぼし。(goo辞書より)
タイトルの『ギルティ』(日本語訳で「有罪の、罪を犯した」という意味です)は、最初は無罪にしてやろうと相棒に嘘の供述までさせたアスガーが自分の罪を認める事を表しているのだと思います。
ミケルについては考えさせられました。
ミケルがもう少し上手く説明できる人間だったらもう少し事件は早く解決していたかもしれません。
オリバーは救えなかったけど。
まぁはなから相手が聞く気がなさそうなら説明する気も起きないか。
お前はしょせん前科者みたいな目でみんなから見られちゃってるし。
アスガーも「また塀に戻りたいのか?」みたいにあおってくるし。
一度罪を犯した人間は世間から前科者として見られ、話も取り合ってくれない。
アスガーも罪を認めた後、ミケルと同じように世間は冷たく接することになるのかもしれません。
そして心に深い傷を負ってしまったであろうマチルデが今後どうなってしまうのか、イーベン・ミケルたちはどうしていくのか、事件のその後が気になりました。
まとめ
いかがだったでしょうか。
ワンシチュエーションで進行していくサスペンス映画『ギルティ』。
観ているこちらも椅子やテーブルに指をトントンしながら「早く・・・早く・・・」と焦ってイラついてしまうかもしれません。
派手なアクションはありませんが、静かな緊迫した空気感がハラハラさせてくれます。
そして最後にとにかく言いたいことは・・・電話は鳴ったら早く出て下さい!
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