あなたは『普通』でしょうか?【本の紹介 コンビニ人間の感想】

読書
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オーディブルでおすすめに出てきていた。
なんか面白そうだったから聞いてみた。

そんな浅いきっかけであらすじも何も知らず出会った本、『コンビニ人間』。

タイトル的には「コンビニ大好きな人のおすすめ商品とかコンビニ活用方法とかかなー」と思って軽い気持ちで聞き始めたら、とても深く考えさせられるお話でした。

この本はこんな方におすすめ

本屋大賞の本が読みたい方

短めの本を読みたい方

人との関係にちょっと悩んでいる方

コンビニ人間

2016年出版の小説

著者:村田紗耶香さん
イラスト:金氏撤平さん

ジャンル 小説

ページ数160
オーディブル再生時間3時間43分

オーディブルナレーター:大久保佳代子さん

この作品は2016年芥川賞受賞後38の国と地域で翻訳されています。

オーディブルだとナレーターがタレントの大久保佳代子さんで、少し感情が抑えられていて淡々としているところが本の雰囲気にすごく合っているなと感じました。

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著者について

著者の村田紗耶香さんは1979年生まれ、千葉県出身の小説家でエッセイストです。

今作『コンビニ人間』で芥川賞受賞他、2003年『授乳』で群像新人文学賞、2009年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、2013年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞、他数々の作品で賞を受賞。

大学生時代に小説と向き合うためにコンビニでアルバイトを始めて、『コンビニ人間』で芥川賞を受賞した後もバイトを続けていたそうです。

過去にメディアにも出演されていたり、YouTubeにも動画があがっています。

あらすじ

大学生時代からオープニングスタッフとして同じコンビニで働き続けている36歳の恵子。

幼少時代から「変わった子」として周りの人に扱われ、自身も周りの言う『普通』が理解できないまま周りの行動を真似してなんとか『普通』を装いながら日々生活をしている。

家族は「婚活をしろ」とかいつか恵子は「普通に治る」と言うが恵子にはそれがよくわからない。

ある日、同じコンビニをクビになった男性・白羽と同棲することになるが・・・

『普通』とは何かを問う社会派ストーリー

登場人物

古倉恵子(ふるくらけいこ)・・・本作の主人公。大学生時代からコンビニでバイトを始めて18年間アルバイトとして勤めている。独身。

古倉麻美(ふるくらあさみ)・・・恵子の妹。姉を常に心配している。

泉(いずみ)・・・恵子の働くコンビニの仲間。37歳主婦。少し性格はきつい。

菅原(すがわら)・・・恵子の働くコンビニの仲間。24歳バンドのボーカルをしている。まじめで仕事に熱い。

店長・・・30歳の男性。常にきびきびとしている。

ミホ、ユカリ、サツキ・・・恵子の地元の友人。同窓会以来仲良くなった。

白羽(しらは)・・・180cmはゆうに超えるひょろりとしたやせ型の男性。愚痴や偏見が多い。

感想(ネタバレあり)

本書のテーマは『普通とは何か』だと思います。

主人公の恵子はたぶん発達障害の何かがあるのかなという事は内容から伝わるのですが、なんやかんやで努力して社会に溶け込もうとして、それがうまいこといっているなと率直には感じました。

前半の幼少期のエピソードにあった焼き鳥のくだりはそこまでおかしいこととは思わなかったのですが・・・どうなんでしょう?

「これ、食べよう」と言ったのが自分のためやただの興味本位ではなく、お父さんが焼き鳥が好きだから。父や妹が喜んで小鳥を食べていることしか想像できなかった。というところから家族思いの子どもなんだなぁと感じました。
まだ小さい時って何より家族が大好きで何かして喜ばせてあげたいとか思うのって普通ではないのでしょうか?
きっと家族でもないそこらの鳥になんの情もわかなかった上の子供ならではの発言だったのだと判断してしまいます。

家にきれいな花を飾るのが好きな母親を見ている子が道端で自分がきれいだと思った花を摘んで持ち帰って母親を喜ばそうとプレゼントするということはほほえましく感じるものだと思います。

私だったら、我が子が死んだ小鳥を見て同じことを言ったら「お父さんを喜ばせたかったんだね。優しいね。」と一言添えた上で命の尊さや悲しい気持ちなどを少しずつ伝えていくかなと思いました。
恵子の母親のようなその場で驚き困惑し、「小鳥が死ぬことは悲しい」を押し付けるようには言わないかなぁ。

物事について判断ができるような年齢になってきたころに同じようなことを言っていたら「何か問題があるのかな」と調べたり病院に連れていくかを考えだしますが・・・

小学校のエピソードも命の大切さとか怪我をしたら痛くて悲しい気持ちになることや、プライベートゾーンと呼ばれる人には見せてはいけない体の場所についてあらかじめ教えてあげていたらここまで大変な事態にはならなかったんじゃないかなぁ。
「なぜダメなのか深層では理解できないけど、とりあえずやっちゃダメな事なんだな」くらいには理解してくれたんじゃないかなと思います。幼少恵子ちゃん理解力高くて賢そうだし。

でも根気よく伝えていかなければならない周りの人たちは、やっぱり世間で言う『普通』の子と接するよりは大変なんでしょうね。

とはいえ失敗をくりかえしてしまった幼少恵子ちゃんが少しかわいそうに思いました。

大人になっても周りを見て『普通』を保つためにしゃべり方や服装やらなにやらを吸収している恵子はすごいと素直に思いました。
人に対しての分析も冷静にするし、自分に対しても冷静に俯瞰してみている。

むしろ恵子の同級生のお友達の方が気持ち悪さを覚えました。
自分に直接なにかあるわけでもないのに友人が36歳独身、大学以来コンビニのバイトであることに疑問を持つのはなぜなんだろう?当人のこの先を心配しているからなんだろうか。
恋愛経験なしなのも勝手な解釈をして勝手に安心しているのが『現実によくある風景』を思わせて怖さを感じました。

つい最近小説『流浪の月』を読んだから余計人の【真実や内情を知らないのに勝手に自分のいいように解釈して批判したり親切したりする】ことが不快に感じたのかもしれません。

『流浪の月』のネタバレあり感想はこちら↓↓

35歳でコンビニバイトなんて人生終わってると話すコンビニ仲間も、会話の端々に偏見と差別がたくさんあって、陰では愚痴と不満だらけで『普通』である周りの方に嫌悪感を抱いてしまいました。

白羽さんは好感持つ人いるんですかね!?
世間のうっ憤が塊になったような負のエネルギーすごい人!

ここまで何にでも批判的になれるのはある意味頭の回転が早くて、周りの情報を読み取る力があるのかもしれません。

とはいえいつか事件を起こすであろう雰囲気がむんむんするし(実際ストーカー行為をしても反省なし)、自分はまともに働かず同棲している相手に養ってもらおうとか他力本願でその割には相手にモラハラするしで擁護しようのない究極キャラだったので、白羽さんの存在が周りが『普通』であると思わせてくれていたのだと思います。

しかし、白羽さんも話には詳しく出てこないけどもしかしたら『普通』であることを押し付けられ続けてきた被害者なのかもしれません。
男はいい女を選んで結婚しなければならない。ある程度の収入のある正社員として働いて家庭を養うべきだ。と。
白羽さんの生い立ちによってはあの自己肯定感の低さと世間への恨み節は納得できるものになるかもしれません。

白羽さんへの恵子の(ん?なんで白羽はさんづけで恵子は呼び捨てになっちゃうんだろう?)発言はすごくまともだと思いました。「ビジョンがあるならそれを達成してから女を選べ」的なところとか。

同棲を始めた後の同級生のいわゆる無責任な外野の声も不快でしたね~。
「心配してたんだよ~」というセリフや自分は責任をとれないのに「妊娠しちゃえ!」とか恐怖でしかありません。
他人に干渉してきて無責任にいらない親切を押し付けてこられる恐ろしさは経験した方も結構いるんじゃないでしょうか。

周りの興味本位な野次馬はよくあることですが、これって本当に白羽さんの言う『ムラ社会』そのもので、みんな退屈で他人の不幸話がうれしいし自分の理解に及ばないものは『異物』として村八分にするんですよね。

自分の理解の及ばない、足並みが揃えられない存在は『発達障害』などの病名を付けてみんなで異物として区別したいのかもしれません。

そこに当人の幸せとかは考えているんだろうか。とかもう考え出したら頭がこんがらがるほど難しい話です。

最後は恵子が自分でしたいことを改めて理解して人に言われてではなく自分の道を歩み始めて感動しました。

なんだよ恵子・・・かっこいいな・・・。

白羽さんにいいように使われないで本当に良かったですよ。白羽さんも好きなことがみつかるといいね。
そして借りたお金は返そうぜ。

まとめ

この作品の『普通』と言われる人たちはすごくおせっかいで悪口ばかりなので関わりたくない人たちばかりだなぁと思うとともに、一番まともな人間は恵子なのではと思わされてしまいます。

【おひとり様】が人気になってだいぶ経ちますが、『普通』の居心地の悪さに気づいた人が周りと距離を置きたくなったからなのかもしれませんね。

恵子の自分のやりたいことをわかっているということはすごくうらやましかったです。

コンビニの正社員になるのはダメなのかなぁ?有能そうだし天職だと思うけど・・・本人がアルバイトという雇用形態がやりやすいならアリだと思うし、自分で仕事もして家も借りて生活もしているし周りになんの迷惑もかけていないので自立しているからいいと思いますが・・・世間が認めるような『普通』は厳しいですね。

本自体ページ数も短めであっさり読めるのに深く考えさせられました。

自分は『普通』に社会に溶け込んでいるのでしょうか?
『普通』はみんなをコピーしていくことでしょうか。
レールに乗って世間に認められることでしょうか。

『多様性』が叫ばれる昨今ですが、結局は異質なものは排除されてしまうのが現実なんだと突き付けられたような気がします。

その中で自分の生き方を見つけた恵子はかっこいいし、世間に認められていいと思います。

もっと自分自信を大切にしていきたくなる一冊でした。

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プロフィール
この記事を書いた人
あびう

男児二人育児中のアラフォー主婦
寝ること、食べることが大好き
面倒くさがり、のんびり屋ながら何かに挑戦しようとブログを開始

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