たった一行ですべてが変わってくる名作【十角館の殺人】

読書
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とある無人島、とあるいわくつきの館で繰り広げられる連続殺人・・・

逃げたくても連絡船がくるのは一週間後。犯人は・・・この中にいる!?

某金田一少年読者にはたまらないシチュエーションですが、1980年代の小説です。

それがこの【十角館の殺人】

「どんでん返しがすごい小説」系ランキングや「おもしろいミステリ小説」系ランキングでたびたび名前が挙がるこの作品を読んだのでご紹介します!

作品紹介

著茶 綾辻 行人(あやつじ ゆきと)

発行日 1987年

ジャンル ミステリー

ページ数 290

※流血を伴う殺人描写が含まれています。

この【十角館の殺人】以降、【○○館の殺人】というタイトルの作品がいくつかあります。(『館シリーズ』と呼ばれています)
館シリーズは2019年時点で累計500万部を突破する超人気シリーズとなっています。
十角館の殺人で登場した人物が活躍するみたいですよ。

作者

作者の綾辻行人さんは1960年生まれ、京都出身の小説家です。

【十角館の殺人】でデビューし、後の作品【時計館の殺人】で第45回日本推理作家協会賞(長編部門)、2018年には推理小説の発展に貢献した作家・評論家に贈られる日本ミステリー文学大賞を受賞しています。

文章によるどんでん返しと呼ばれる「叙述トリック」を得意としている作家さんです。

『館シリーズ』『囁きシリーズ』『殺人方程式シリーズ』など多くの推理小説を発表しています。

あらすじ

九州にある小さな無人島【角島】。

20年程前、その角島に「青屋敷」という建物を建てて移り住んだ夫婦がいた。

しかし半年前に青屋敷で夫婦・使用人夫婦の四人が殺害され、屋敷は全焼した。

島に泊まりで働きに来ていた庭師が行方不明だが、この庭師が犯人なのか、事件は闇の中。

そんな孤島「角島」に現存する離れ「十角館」へ大学ミステリ研究会の7人が訪れる。

同じころ、本島では同じ大学ミステリ研究会のメンバーが奇妙な手紙を受け取っていた。

手紙の主は誰なのか?何が目的なのか?

「青屋敷事件」と「謎の手紙」二つの奇妙な事件が重なる時、十角館では凄惨な事件が始まろうとしていた・・・

登場人物

ミステリー研究会

角島メンバー(ミス研の主要メンバーは有名ミステリ小説家の名前で呼び合っている)

エラリイ・・・法学部3回生。マジックが得意。

カー・・・法学部3回生。けんかっ早い。

ポウ・・・医学部4回生。ヘビースモーカー。オルツィと幼馴染。

ヴァン・・・理学部3回生。不動産業をしている叔父が角島を購入したことで今回の角島ツアーが決定した。

アガサ・・・薬学部3回生。はつらつとしていておしゃれが好き。

ルルウ・・・文学部2回生。童顔で小柄。ミス研の会誌『死人島』の次期編集長。

オルツィ・・・文学部2回生。引っ込み思案。ポウと幼馴染。

本島ミス研メンバー

江南孝明(かわみなみたかあき)・・・ミステリー研究会の元会員。熱しやすく冷めやすい。

守須恭一(もりすきょういち)・・・ミス研会員で江南の友達。すぐ人のことに踏み入ろうとする江南とは対照的で物事に慎重。

青屋敷関係者

中村青司(なかむらせいじ)・・・建築家。十角館を設計した。

中村和枝(なかむらかずえ)・・・青司の妻。旧制花房(はなふさ)

中村千織(なかむらちおり)・・・青司の娘。

中村紅次郎(なかむらこうじろう)・・・青司の弟。高校で教師をしている。

北村夫妻・・・住み込みの使用人夫婦。

吉川誠一(よしかわせいいち)・・・庭師。月に1回青屋敷の庭の手入れをしていた。事件の数日前に島に上陸している。

吉川政子(よしかわまさこ)・・・誠一の妻。婚前は青屋敷に勤めていた。

その他

島田潔(しまだきよし)・・・中村紅次郎の友人。寺の三男。

物語のネタバレ含む感想

後半のある一行によって読者は「えぇ!?」「マジで!?」と驚かされるということで有名な本作ですが・・・
本当にびっくりしました。これはすごい。
私は「後半の一行」を「最後の一行」と勘違いして読み進めてしまっていたので、「後半の一行」で度肝を抜かれたあと「最後の一行にはこれをさらに超えるどんでん返しがあるのか・・・ゴクリ」と無駄にさらなるハードルを上げてしまったがために最後「?」となってしまいました。

ここからはネタバレを含む物語の感想となりますので、ネタバレを避けたい方はスルーしてください。

↓  ↓  ↓

やっぱりこの作品はミス研のメンバーが有名小説家の名前を使用していることが一番大きなトリックですよね。

私はあまりミステリ小説を読んだ経験がなかったので、海外の小説家をトリックに使われてしまってじゃっかん「?」な部分もありましたが、あの人物があの名前の人か!くらいには理解できるのでちゃんと作品自体は楽しめました。
でもモーリス・ルブランさん知らなかったのが悔やまれました。私にとっては守須はただの守須だったので・・・
江南でコナンは漫画のおかげでわかりました!コナン君!
あと聞いたことある小説家はアガサ・クリスティーとかエドガー・アラン・ポゥくらいかな・・・(作品は読んだことない)

作中も海外小説をオマージュしたようなシーンやセリフが出てきたりするので、もう少し海外小説にも詳しかったらこの作品の面白さは数倍になると思います。

ミステリ好きな読者の方からしたら犯人の行動に「こいつなんか怪しいな」と思える部分があったと思うのですが、(犯人を知ったうえで再読したらたしかにちょっと不自然かもなという行動があったようなないような・・・)
私自身はポゥを疑っていて、なおかつ一番好きなキャラもポゥだったので、退場してしまった時は推理が外れた残念さとさみしさで複雑な気持ちになりました。

というか、事件の発端である千織の死ですが、そもそも医学部で考え方もしっかりしているポゥがいながら千織に無理な飲酒をさせるだろうか?
比較的大人しいルルゥも急性アル中にさせるほど飲ませそうにないし、どんちゃん騒ぎに興味なさそうなエラリィと自己主張できないオルツィは見てるだけって感じだろうし、ノリでお酒飲ませそうなのカーかアガサくらいじゃないですか?
そうすると復讐するべきは本当に6人全員だったのだろうかと疑問に思いました。

「いじめは見ているだけの人もいじめている」とはよく言いますが、命を奪われるほどの復讐をされるなら守須君はもう少し当時の状況をみんなから情報収集してから計画を立てても良かったんじゃいかなぁと思います。
例えばメンバーの内誰かはトイレに行っている間に無理やり千織がお酒を飲まされていたパターンとか、千織がお茶と間違えてうっかりお酒を一気飲みしてパターンとか、実際は何の関係もなかった人がいたとかありうると思うんですよね・・・

実際オルツィの殺害に関しては犯人も少し不本意みたいだったし、指輪の件だけで考えるなら千織のための復讐というよりかなり自分勝手な殺人犯です。
というか実際に千織はどうやって死んでしまったのかも調べず6人も殺して、挙句エラリィを犯人に仕立て上げるあたり、かなりではなくてただの自分勝手な人ですね。

なので守須君にはなんの感情移入もできずに終わってしまったのが残念に感じました。

トリックである舟での行き来も予報が外れて海が荒れたり、誰かに目撃されていたり、お父さんに「あ、明日舟使うから出しといてー」とか言われたら計画はその場でアウトになるので、かなり運だよりなところもあるなーと思いました。

あと、水分とらないでいると風邪みたいな症状になるの?とちょっと気になっちゃいました。
この作品を読んだ「嫌いな行事を体調不良で回避したい勢」が真似しないことを祈ります。脱水は危ないよ。

ラストに登場する「薄緑色のガラス壜」については、連続殺人とその犯人探しに夢中になりすぎて出てきたときはすっかり忘れていました。
プロローグで犯人が海へ投げたアレですね。
投げたあと時間をあまり置かずに浜に打ち上げられたのか、1週間近く海を漂って浜に打ち上げられたのかはわかりませんが、自分で投げて自分で見つけて「審判か」というところまではすごく「おぉ・・・最初のビンか!犯人の元に戻るとかドラマチックだなー。で、諦めて自首するのか」と読んでいたのに、「あそこのおじさんにこのビンを渡してきてくれないかい」って子どもに渡すとか・・・

中学生の告白かぃ!

と守須にガッカリしてしまいました。
自分で渡しなさいよ。島田に「これが事件の真相です」とかなんとか言って自分の手で渡しなさいよ。
何知らない子どもにお使いさせてるのよ。

最期まで私の中で守須君は自分本位で残念BOYでしたね。

島田さんは自由人過ぎて最後までよくわからないまま終わったし(寺はいいのか?)、最初に漁師さんが言っていた「十角館に出てくる幽霊」の噂って結局なんだったんだろう?

ヴァンが手を振ったりボートを沈めたりしないだろうし、まさか本当に・・・・・

読んだあなたはどう思いましたか?

まとめ

ということで1987年の作品【十角館の殺人】、ヘビーな喫煙者や女の子が炊事とかそういったところを除けば時代的な古さを感じず楽しく読めました。(言葉遣いや仮名遣いに時代は感じますが)

ただ、もう少し自分に海外ミステリの教養があったらもっと楽しめたのになーというところが残念です。
(小説内に有名海外ミステリのオマージュがあるらしいけどどれかわからない)

そしてこの作品、「実写化は不可能だろう」と言われていましたが、なんとドラマ化されたそうです。

あのシーンは、アレはコレはどうやって映像化したの!?と疑問だらけですが、評判をみるに結構な高評価です。

現在はhuluのみの配信のようなので(2024年8月現在)私は観られていないのですが、観られる方は是非観てみてください!小説が未読でも楽しめるそうですよ。

さらに漫画家もされています!

小説とは変更点もいくつかあるようですが、口コミも良かったので気になる方は是非!
(これも絵でどうやって小説を表現しているんでしょう)
全5巻で完結です。

孤島で繰り広げられる凄惨な連続殺人、事件を追う登場人物たち。すべての事件が明らかになった時、2度目のプロローグから読み始めてしまう、そんなおすすめの作品です。

プロフィール
この記事を書いた人
あびう

男児二人育児中のアラフォー主婦
寝ること、食べることが大好き
面倒くさがり、のんびり屋ながら何かに挑戦しようとブログを開始

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