あなたの住む町に「自治活動に積極的な正義感に溢れた人」はいませんか?
ゴミの分別にやたら厳しい、路上駐車していると飛んできて注意してくる・・・
やたらルールに厳しい人って「なんだかあの人苦手なんだよなぁ」と敬遠したくなりますが、その人にも大切な思い出があったり大切な人がいるのかもしれません。いや、きっとあります。
今回はそんな大切な存在を失った堅物の男『オットーという男』をご紹介します。
とにかく泣けます。
ティッシュやハンカチのご用意を。
↓※こちらの商品はDVDではなく、【CD】です!まだ正式にDVDは発売されていないのか、輸入品以外は見つけられませんでした。
作品紹介
監督 マーク・フォースター
脚本 デヴィッド・マギー
製作 アメリカ
2023年公開
上映時間 126分
ジャンル コメディとジャンル分けされていましたが、個人的にはこれは感動系ヒューマンドラマだと思います。
2015年のスウェーデンの映画『幸せなひとりぼっち』をハリウッドでリメイクした作品です。
※主人公がたびたび自殺しようとする描写があります。血が出るようなグロテスクな表現や過激さはありませんが、自殺描写が少しでも苦手な方は心の準備をしてください。
『オットーという男』Amazonプライムビデオではこちらから観られます。登場人物
オットー・アンダーソン・・・主人公。堅物でルールに厳しい。
ソーニャ・・・亡くなったオットーの妻。教師をしていた。
マリソル・・・オットーの家のお向かいに越してきた女性。メキシコ出身。妊娠中。
テミー・・・マリソルの夫。運転が下手。
アビとルナ・・・マリソルとテミーの娘。
アニタとルーベン・・・近所に住む夫婦。
ジミー・・・近所に住む青年。オットーに挨拶やランチへの誘いをしてくる。
あらすじ
とある住宅街に住む老人オットーはルールや規律に厳しいので一部の住人に煙たがられていた。
最愛の妻に先立たれ、長年勤めた職場も退職。
自分の居場所がなくなり妻の元へ旅立つため首を吊ろうとしたその時、窓の外で騒がしく駐車しようとしている夫婦がいた。
世話焼きなオットーは夫婦の元へ行き、駐車の手伝いをする。
それがお向かいに引っ越してきたマリソル一家との出会いだった。
陽気で何かにつけて関わってこようとするマリソルに困惑しながらもオットーの生活が少しづつ変化していく。
見どころ
今作の見どころはやっぱり頑固で『堅物な老人が周辺の人間に徐々に心を開いていくまでの流れ』です。
というか元から根はすごく優しい人だというのが随所に現れていたので、『周辺の人間がオットーの良さを引き出していく流れ』が見どころだと思います。
映画の文言を使うとすれば「オットーの色のない人生に色がついていく過程」がおすすめです。
そしてマリソルのスペイン語に字幕がつかないのがまた良かったです。
「何言ってるのかわからないけどなんとなく雰囲気が伝わる」くらいの感じ。
作る料理とか異国の文化を感じさせる部分がなんか良かったです。(語彙力のなさ)
そんなマリソルの明るさが見ているこちらも楽しい気持ちにしてくれます。
そしてそして、「エンドロールまでしっかり見てほしい」映画でもあります。
アレがあってこその号泣でした。
鑑賞後、共感していただけたら嬉しいです。
鑑賞後に知って楽しい小話
オットーの若かりし頃を演じている青年オットーはトム・ハンクスさんの実の息子、トルーマン・ハンクスさんが演じています。
これ、観終わってから知って「へぇ~」と思ったのですが、知ってて観てたら「この人がトムハンクスの息子か~」って話に入り込めなかったかもなので知らずに観ていてよかったなと思いました。
私はあまり顔も雰囲気も似ていないかなーと思ったのですが、今作の監督は『ビッグ』や『スプラッシュ』の頃のトムに似ていると思ってトルーマンさんを起用したと語っていますが・・・どう思いますか?
本編の内容を含む感想
ここからはネタバレを含む映画の感想となりますので、まだ映画を観ていない方・ネタバレを避けたい方はスルーするかこの記事をそっと閉じてください。
↓ ↓ ↓
この映画、「コメディ」としてジャンル分けされていたので笑えるのかと観てみたら騙されました。
全編に渡って涙腺が緩みっぱなしです。
やけに人にケチつけるオットーに最初は「あーめんどくさい系クレーマーの話なのかな?」と思っていたら全然違いました。
彼の主張することは正しいことばかりで、相手を負かそうとか困らせようとかいった意図は全くなく、ただ彼の伝え方が不器用なだけなんです。
ロープも購入長さ分のお金しか払いたくないのも理解できるし、ヤードで計算するなら書いといてくれよと思うのももっともです。
でも店内でナイフ使うのはダメだと思うけど(最初店員さんに止められてたけど結局黙認されてたし、刃物を店内で使用するのアメリカではOKなのかな?)。
たぶんダメですよね。頑固なお客は対応しづらいからスタッフさんにも同情します。
そんな感じで頑固で融通の利かない堅物じいさんなのでご近所の一部の人間や職場の人間には煙たがられていました。
でも煙たがる人は大概ルールを守れてない人で、一部の他の住人はオットーに好意的なんですよね。
つまりは自己中心的で迷惑をかけるタイプの人たちに嫌われているという状況なんだろうと思います。
退職のケーキ入刀なんか胸が痛くなりました。アレは最悪の嫌がらせだよ・・・
どうやらあの退職祝いを用意した人たちは会社が合併してオットーのことを良く思っていない若い人たちだったようだけど、長年働いた人に敬意もなくアレはひどい。
最愛の妻を亡くし、職場の居場所もなくしたオットーは自殺を試みようとするのですが、ここで陽気なメキシコ出身のマリソル一家と運命の出会いを果たします。
このマリソルがまたすごい。
最近ではほとんど見ることのないTHE・ご近所づきあい上手です。
素性もわからないご近所の老人に娘二人を預けたり、あれやこれやを借りにきたり、車の運転指導を依頼してきたり、タクシー代わりに病院に連れて行ってとお願いしてきたり、挙句の果てには最愛の妻のことにまで首ツッコんでくる距離感のなさがすごい。
あの図々しさには引いた人も少なくないんじゃないかと思います。
私だったら「もうすこし、半分の距離感からお願いします」と思ってしまいそうです。
しかし、もう自分には何もないと思っていたオットーにとってはうれしいことだったのかもしれないし、マリソルは孤独を感じているオットーの異変に気付いて事あるごとに関わってきたのかもしれません。
周りに頼ってないと何もできないおバカそうに見えるマリソルは実は名門大学と大学院を出ていることが発覚しましたし。
本当はかなりのしっかり者でした。
他のご近所さんにもいい印象を持たれていたので、ちゃんと人をみて付き合い方を変えていたのかもしれません。
そしてオットーが死のうとするたび出てくる妻との走馬灯はティッシュなしには観られませんでした。
後半に子どもの話や妻の死因までが語られるのですが、私はてっきり事故で・・・かと思ってたら「半年前にガンで」と言っていたのはちょっと「え?」となりましたよ。
なぜって彼の思いだす妻はいつも若いのでてっきり妻は若くして亡くなって、辛さをやわらげようと仕事に打ち込んでいたり、自宅周辺のパトロールをしていたのかと思っていたので。
でもお墓にはたしかに「1955-2018」とあったので63歳で亡くなっとるやん。
じゃぁ眠る時のベッドで手を伸ばすとソーニャの手が若い人の手だったのとか、20代そこそこの思い出ばかりだったのは何故なんだい・・・最愛なら年取ってからのいい思い出もたくさんあるだろうに。
あと、病院でビエロに大切な1964年のコインを渡しちゃダメでしょ。
大切なものを他人に簡単に見せたり渡すからトラブルになるのに~。
そんな疑問でモヤっとしてしまいましたが、そこはひとまず横に置いておきました。
ストーリーが本当に優しくて泣けたので。
色のない人生にソーニャが色を付けてくれた。ソーニャが亡くなりまた色がなくなってしまった人生に、マリソル一家が色を付けてくれた。
マリソルの娘が描いた絵がまた泣かせてくれます。
オットーにだけ色を塗ってあるっていう。
娘たちもオットーという人柄をちゃんと理解していたんでしょうね。
マリソルがオットーの病気を笑ったシーンもよかったです。
最近はなんでも「不謹慎だ」と言う風潮がありますが、あそこはマリソルが「ハートが大きいのね」って笑ったからオットーも自分を悲観的に思わず自分の病気に前向きになれたシーンだと思うので。
でもそう言えるまでの関係性があってこそのセリフなんでしょうね。
看護師さんすごく「不謹慎ね。なんで笑ってんのかしら」的な怪訝な顔してたし。
とはいえ自分もなにか重大なことが起きたら少しくらい笑いごとに変換してくれる人がいた方が気がラクになれるのでありがたいです。
そんなこんなで結局自死することをやめて人生を全うする選択をしたオットー。
マリソル一家の本当のおじいちゃんのようになれて、家に飾られている写真からもその幸せが伝わってきました。
その矢先のラストシーン。
映画をよく見る人からはお決まりの最後なのでしょうが、わかっていても泣かずにはいられません。
遺言のなかにあるテミーには運転させるなの文言が、いつまでも娘の夫を信用できない父親のようで「あぁマリソルを娘のように、子どもたちを本当の孫のように想って晩年を過ごしたんだなぁ」と涙が止まりませんでした。
そのテミーも「雪かきをしていない」とすぐに気づいたので、ちゃんと普段からオットーを気にかけていたということがあの一言に表れていて一家全員のやさしさにグッときました。
この映画を観て
・生きている時に行った行為は残された人にも引き継がれていくこと
・人と関わることの大切さと人の温かさ
・まじめで誠実でいれば良い人が集まってくる
・終活はしておこう
ということを深く感じたのでした。
そしてこの映画、結局功を奏したから結果オーライなのかもしれませんが、倒れた老人が線路に落ちるシーンで周りの人たちが助けもせず一斉にスマホを老人に向けて録画や写真を撮りだすところにヒヤッとしたものを感じました。
なんで若い人たちが手を伸ばして助けようとしないんだろう。
オットーが老人を助けたあと自分が電車に轢かれようとしたところでも「危ないぞ!」と声をかけて正気にさせてくれたのは初老の男性でした。
若い人たちは終始録画をし続ける現代の恐怖。
世界中の人たちは人に興味を持たずSNSのバズりの材料になるものにしか興味がないような・・・あのシーンは怖かったです。
こういった「事故現場や急病人に手を差し伸べずスマホを向ける」という行為の恐ろしさはたびたびドラマなどでも題材にされていますが、現実もそうなのでしょうか。
もっとみんな優しいと信じたいものです。
映画内ではジェンダー問題にも触れられていましたが、マリソルの娘のアビーとルナが人形遊びをしているその人形がプロレス人形だということもちょっと関係あるのかな?
リカちゃん人形みたいなかわいらしいものでないところがポイント的な。
メキシコ出身だからプロレスってだけかなぁ?
覆面しながら一緒に遊ぶテミーのいい父親っぷりもほほえましかったです。
あと、私は車に全く詳しくないのでルネとオットーが仲違いしてしまった原因が共感できなくて残念でした。
あそこはもうすこし説明が欲しかったなぁ。
素人目にはどっちの車もかっこいいけど、こだわりがある人からすると許せないもんなんでしょうか。
そして途中で出てくる『セムラ』を見て『ワンピースのビッグマムだ!』と思った人がいたら仲間です。
マリトッツォとの違いがよくわからないけど美味しそうでした。
まとめ
オットーは周辺の分かり合える相手に心を開いていっただけで、たぶん最期までルールを守らない人や理不尽な決まり事には真っ向からぶつかっていたんだろうなと思います。
でもそれでいいし、それがいい。
人とのつながりの大切さや、世間で『老害』と括られてしまう高齢者にもかけがえのない人生があって、自分で大切にしている理念がある。
相手へのリスペクトを大事にしたくなる作品です。
それと同時に他人にヘラヘラしていないでやるべきことはやれるオットーがかっこよく見えました。
あなたはご近所さんとどれくらい関わっていますか?
今のご時世、引っ越しのご挨拶もしないので隣にどんな人が住んでいるのかもわからない・・・という方も多いかと思います。
でもちょっとだけ、あいさつやちょっとした世間話ができるようになったら人生はもっとカラフルになるかもしれません。
自分の芯を一本しっかり持って、もっと人と関わりたくなる、優しい作品でした。
ではまた!
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